昨日は7月の米CPI(消費者物価指数)の発表がありました。
米利上げと直結するインフレ指標ということで、最近の市場では最注目の指標です。
結果は総合が+8.50%(予想は+8.70%)、コアが+5.90%(予想は+6.10%)と予想を下回り、相場は大きくドル安・株高となりました。
一夜明け、Fedの利上げ織り込み度合いがどう変化したかを備忘としてメモしておこうと思います。
米CPI発表後のFed利上げ織り込み度合い
Fed利上げ織り込み度合いの変化として、Fedの利上げ確率を出しているCMEのFedWatchを見ていきたいと思います。
2022年9月FOMCの利上げ確率
- 3.00%(0.5%利上げ):57.5%
- 3.25%(0.75%利上げ):42.5%
次回2022年9月のFOMCでは0.5%の利上げ確率が57.5%、0.75%の利上げ確率が42.5%となっており、前日は0.75%の利上げ確率が68%と優勢だったところが逆転しています。
先週の雇用統計発表前には0.5%の利上げ確率が57%、0.75%の利上げ確率が43%でしたので、激強の雇用統計で強まった0.75%利上げ観測が行って来いで戻った感じになっています。
利上げするかどうかは雇用よりもインフレなので、より直接的なデータであるCPIの結果が優先されるのはある意味当然かなと。
2022年11月FOMCの利上げ確率
- 3.50%:16.4%
- 3.75%:53.2%
- 4.00%:30.4%
11月FOMCでの金利見通しは3.5%(現時点から+1%)となる確率が16.4%、3.75%(現時点から+1.25%)となる確率が53.2%、4.00%(現時点から+1.5%)となる確率が30.4%となっています。
最も有力な3.75%は現時点の政策金利から1.25%の利上げとなりますので、9月と11月で0.5%と0.75%の利上げをすることが有力視されていることがわかります。
9月と11月が両方0.5%の利上げとなる確率は低く考えられていますね。
CPI発表前には3.5%(現時点から+1%)がメインシナリオだったことを考えると、11月までで見ると利上げ観測はむしろ強まっていることがわかります。
2022年12月FOMCの利上げ確率
- 3.25%:6.6%
- 3.50%:31.3%
- 3.75%:44.0%
- 4.00%:18.1%
12月FOMCでの金利見通しは3.25%(現時点から+1%)となる確率が6.6%、3.5%(現時点から+1%)となる確率が31.3%、3.75%(現時点から+1.25%)となる確率が44.0%、4.00%(現時点から+1.5%)となる確率が18.1%となっています。
メインの金利水準は11月と同じ3.75%で利上げペースが緩む予想が強いことがわかります。
昨日のCPIを受けてメインシナリオは変わっていませんが、4.00%の確率が下がり3.5%の確率が上がって順位が逆転しています。
年末の金利水準の予測は少し低下傾向という感じでしょうか。
またこのあたりから、ごくわずかながら利下げする確率があることがわかります。
2023年2月FOMCの利上げ確率
- 3.00%:0.8%
- 3.25%:9.6%
- 3.50%:32.8%
- 3.75%:40.9%
- 4.00%:15.9%
2023年2月時点のメインシナリオは3.75%で年末時点からは変化なしです。
2023年3月FOMCの利上げ確率
- 3.00%:0.4%
- 3.25%:5.1%
- 3.50%:21.0%
- 3.75%:36.8%
- 4.00%:28.6%
- 4.25%:8.1%
3月もメインシナリオは3.75%と変わりませんが、2番目に確率が高いのは4%となっています。
CPI発表後も大きな変化はありません。
2023年5月FOMCの利上げ確率
- 2.25%:0.2%
- 2.50%:2.7%
- 2.75%:12.8%
- 3.00%:28.7%
- 3.25%:32.8%
- 3.50%:18.6%
- 3.75%:4.2%
2023年5月のメインシナリオは3.25%の政策金利となっています。
CPI発表前は3.75%がメインシナリオとなっていたものが大きく変化しました。
インフレのピークアウト感が出たので、このあたりで利下げという観測でしょうか。
2023年6月FOMCの利上げ確率
- 2.75%:0.2%
- 3.00%:2.8%
- 3.25%:13.0%
- 3.50%:28.7%
- 3.75%:32.7%
- 4.00%:18.5%
- 4.25%:4.1%
2023年6月の金利は3.75%がメインシナリオでCPIからも変化ありません。
2023年5月の利下げ織り込みはノイズ的なものなのでしょうかね。
2023年7月FOMCの利上げ確率
- 2.50%:0.1%
- 2.75%:1.0%
- 3.00%:6.1%
- 3.25%:18.1%
- 3.50%:30.0%
- 3.75%:28.1%
- 4.00%:13.8%
- 4.25%:2.8%
2023年7月の金利確率で最も高いのは3.5%となっています。
昨日のCPIまでは3.75%がメインシナリオでしたが、わずかながら順位が逆転し3.5%がメインシナリオとなりました。
雇用統計前の水準に戻り、行って来いの展開となりました。
全体的には雇用統計からの行って来い
Fedの利上げ確率を見てきましたが、全体的には先週の雇用統計を受けて強まった利上げ確率分が後退したという感じで、雇用統計からの行って来いの状況でしょうか。
特に9月の利上げについては0.75%ではなく0.5%がメインシナリオとなり、9月FOMCに向けては9月に発表される8月雇用統計とCPIが大きな意味を持ち、この見方に変化があるか引き続き注視していく必要がありますね。
雇用は強いわけですが、今回のCPIがより利上げ期待に影響を与えたことを考えると、最大のイベントはやはり来月のCPIでしょうか。
一方、来年の利下げについては要人発言から何度も否定的な発言が続いていて、行き過ぎな感じもしています。
米CPI発表を受けた市場の反応
米CPI発表を受けたドル円・ユーロドル・米10年債利回りの反応を見ておきます。
ドル円、ユーロドルともに発表後は一気にドル安方向(ドル円は上昇、ユーロドルは下落)に動き、12時をピークに少しずつ反転し落ち着いていく動きでした。
ただユーロドルが半値戻しまで戻す一方で、ドル円は3分の1戻しくらいですので戻しの強弱はあります。
一方、10年債利回りについては、CPI発表後に大きく下落した後、朝方までにはほぼ発表前の水準に戻しています。
深夜2時に10年債の入札があったことも関係していると思いますが、金利が全戻ししている点は要注目です。
基本的に為替・株・金利で言えば金利が最も正しいことが多いので、金利を信じるなら今の動きは行き過ぎの可能性があります。